第53章

 あのざまを見た瞬間、思わず鼻で笑ってしまった。

 見かけばかりの木偶の坊が、不意打ちなんか仕掛けてくるとはな。こんな手合いに、手加減してやる義理はない。

 ――とはいえ、ここは病院だ。あまり痛めつけすぎて宮沢詩音にでも見られたら、間違いなく怒られる。そう思って、俺は頃合いを見て手を離した。

 ちょうど周防明広を解放した、その瞬間だった。階段室の扉ががちゃりと開き、次いで、眠たげな顔をした宮沢詩音がふいに姿を現した。

 そして彼女は、周防明広が俺に壁際へ押さえつけられて殴られているのを見るや否や、一気に目を覚ましたように駆け寄ってきた。怒りのまま俺たちの間へ割って入り、勢いよく俺を突...

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