第57章

 白原はにこやかに笑って、私に言った。

「若奥様、わたしが出向くといっても、大した用事があるわけではないんです。ただ、若様に夕食を届けようと思いましてね」

「ご存じのとおり、若様は胃がお弱いでしょう。撮影現場のお弁当ばかりでは、お身体がもちません。お婆様がご心配なさって、召し上がりやすい夕食を用意させたんです。若様のところへ届けてさしあげたくて」

「ちょうど若奥様もお出かけになるところですし、ひとつお願いできませんか。わたしももう年でしてね、車で往復するのは少々こたえるんですよ。お手数をおかけします」

 手にした重箱を見下ろしながら、私はなんとも言えない気分になった。

 正直、昨夜...

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