第62章

 さらに数分が過ぎても、部屋の中はしんとしたままだった。

 わかっている。宮沢詩音が、俺を引き止めに来ることはない。

 俺は自分の着替えを抱えると寝室を出て、そのまま母屋の客間へ向かった。

 ちょうど使用人の佐藤が水を汲みに出てきたところで、服を手に客間へ向かう俺を見て、さすがに不思議そうな顔をした。

「若様、今夜は客間でお休みになるんですか?」

 佐藤に、俺と宮沢詩音の間に気まずいことがあったと知られたくなくて、俺はわざと顎を上げて言った。

「そうだ。宮沢詩音は一日中病院にいるだろ。変な菌でももらってきて、俺にうつされたら困るからな」

 そう言い捨てて、俺は服を抱えたまま、驚...

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