第63章

赤村様――あの界隈で名の知れた、筋金入りのスケベだ。

頭の中に、数年前の光景が一気によみがえる。俺がまだ駆け出しだった頃、同じ現場の女優にベタベタ手を出していたのを、間近で見た。

宮沢詩音が自分から会いに行くなんて、羊が虎の口に飛び込むようなものだ。

あいつを一人で行かせるわけにはいかない。

だが同時に、赤村様がクズだなんて、正面から言えるはずもない。

今の俺に対する態度を考えれば、「見下された」「仕事に口を出された」と受け取るだけだ。下手をすれば、意地になって余計に突っ走る。

――決めた。

『行けます、お婆さま。私がお送りします』

お婆さまが怒る前に、俺は先回りして答えた。...

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