第64章

 空野朱音――!

 まさか、あいつが金まで積んで、この作品の現場に入り込んできたのか。

 帰国したばかりの頃だ。俺がこの作品に出ると知るや否や、空野朱音はしつこく俺につきまとってきた。監督に口を利いて、脇役でもいいから出してほしい、と。

 あのとき、俺は一度だけ折れた。監督に引き合わせるくらいなら、と。

 監督も俺に気を遣ってくれていたんだろう。

 ただし条件があった。オーディションは受けてもらう。この作品は制作規模が大きい。ひとりでも演技が水準に達していなければ、作品全体に傷がつく。出資側にも説明がつかない――そう言われた。

 もっともな話だった。俺も同意して、空野朱音にはテス...

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