第67章

 私が反応する間もなく、彼は私の腕を掴んだまま、ずるずるとエレベーターホールへ引っ張っていった。

 足元がもつれて、森原覚の歩幅に必死でついていく。

『森原覚、何するの? 私、用事があるの。上には行けない……!』

 森原覚は取り合わない。

『連れて上がったほうが、空野朱音を早く見つけられる』

『彼女はうちの現場に入ったばかりの助演だ。それに出資付きで入ってきてる。何かあったら洒落にならない』

『損害が、計り知れないんだ』

 その言い草に、私は怒りで笑いそうになった。

 空野朱音は劇の助演で、大口の出資者。だから彼女に何かあれば損失が出る。

 じゃあ私は? 無名の小さなデザイ...

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