第71章

 森原家の古参執事である白原は、森原覚のその表情に見覚えがありすぎた。

 ――機嫌が悪い。

 そう悟った白原は足早に数歩進み、出かけ支度をしている私の前に回り込むと、うかがうように声をかけてきた。

『若奥様、どちらへお出かけで?』

 私は森原覚の顔色をうかがう余裕もなく、白原に言った。

『白原さん、病院へ行かないと。お母さんのほうで、ちょっと……何かあったみたいで』

 私が「お母さんに何か」と口にした途端、森原覚の不機嫌そうな気配が、ほんのわずかだけ引っ込んだ。

 白原がタイミングを見て、さらに尋ねる。

『お一人で行かれますか? 大丈夫ですか? 若様もご一緒されたほうが――』...

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