第74章

 周防明広の言葉に、私はわずかに面食らった。

 空野朱音が森原覚に会いに来たとき、彼はさっと病室のドアを閉めていた。朱音の声も大きくなかったし、扉越しならお母さんにさっきのやり取りが聞こえるはずがない。

 それなのに周防明広がああ言うということは――さっき、わざとドアを開けたのだろう。

 胸の奥が沈んだ。こんな話、お母さんには知られたくない。もともと体が弱いのに、今は脚まで折っている。私のことで余計な心配をかけたくなかった。

 私は周防明広には答えず、お母さんのベッド脇へ行く。お母さんが飲み終えたばかりのスープ椀を受け取り、森原覚が持ってきた弁当箱に静かに戻した。

 黙り込む私を見...

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