第81章

 ――ようやく、詩音が俺の行動に惹かれたんだと思った。

 ところが彼女は、俺の鍛えた身体を一瞥すらしないまま、ぶっきらぼうに言い放った。

『ねえ、もう少し静かにできない? 見てわかんない? 今、手が離せないの』

 その一言で、頭の上を黒い線がすっと通り過ぎた気がした。

 体にはずっと自信があったのに、一瞬でしぼんだ。

 ――俺はもう、宮沢詩音にとって「魅力ゼロ」ってことか? じゃなきゃ、こんな言い方をするはずがない。

 これ以上みっともない真似はしたくなくて、俺は意地で平静を装い、バスタオルを引っ掴んで腰に巻き、浴室へ逃げ込んだ。

 シャワーを浴びて、髪を八分乾きくらいまでドラ...

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