第85章

小村が「大変」と口にした瞬間、頭の中で――どんっ、と鈍い轟音が鳴った。

もうすぐ顧客向けの説明会が始まるというのに、どうして今、トラブルなんて。

私はスマホを握りしめ、できるだけ平静を装って問い返す。

「小村、どうしたの? 何があった?」

小村の声は焦りで上ずっていた。

「詩音さん……今入った情報なんですけど、空野家名義のあの小さなデザイン会社が、今日、顧客向けの会をやるらしくて……しかも会場が、うちの隣なんです」

「……は?」

聞いた途端、体の奥がかっと熱くなる。今すぐその場で爆発しそうだった。

空野家の看板を背負ったあの会社を切り盛りしているのは、空野朱音。開業してまだ日...

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