第99章

宮沢詩音視点

 あの夜――森原覚が正気を失ったみたいに私のマンションへ押し込んできて以来、私は一度も森原覚に会っていない。

 その日、用事で下へ降りたときのことだ。

 エントランスホールで清掃員がぶつぶつ文句を言っていた。

「マナーがなってない人がいてねぇ。ここでタバコを何本も吸って、吸い殻を床に捨てていったんだよ。ほら、こんなに……」

 私は聞き流して、そのまま踵を返した。

 ――けれど、視界の端に散らばった吸い殻が入った瞬間、足が止まる。

 あれ、これ……森原覚がいつも吸っていた銘柄じゃない?

 まさか。

 あの夜、私の部屋を出たあと、ここに座り込んでずっと吸っていた…...

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