第8章

夕暮れの鐘楼で、沈みゆく太陽が窓のクラスを通して血のように赤い影を落としていた。幸村真尾は、手すりの縁から柳崎千早を引き戻し、その手を彼女の喉元へと移した。突き落とす気にはなれなかった――それではあまりに速く、慈悲深すぎる。彼は力を抜き、彼女が床に崩れ落ち、必死に空気を求めるのを見下ろした。

「そう簡単に死なせてやるものか」

幸村真尾の声が、人のいない鐘楼に響き渡る。それはまるで、地獄からの審判そのもののようだった。

柳崎千早は顔を上げた。その瞳にかすかな希望の光が揺らめく。「真尾さん、正気に戻ってくれたのね……まだやり直せるわ……」

幸村真尾はポケットからライターを取り出し...

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