第5章

 デイモンは聖壇の前に立ち、ゆっくりと近づいてくる白い影を見つめていた。

 花嫁は静かだった。足取りは揺れず、所作は端正で、そこに抗う気配は一片もない。

 胸の奥で長いあいだ張りつめていた何かが、そっと緩む。

 ――ようやく。

 やっと覚えたのだ。あの火の檻、あの決まりごと、飽きるほど繰り返した躾。無駄ではなかった。デイモンは早くも、式の後のことまで思い描く。どの場で角を削り、どの礼法をさらに磨かせるべきか。

 神父が古い誓詞を唱え、花嫁の肩が小さく震えた。

 デイモンは声を落とし、彼女にだけ聞こえる距離で囁く。

「今日からお前は、俺だけのLunaだ。クリムゾン・ムーンの頂に立...

ログインして続きを読む