第4章
予定より早くクラブの駐車場にバイクを滑り込ませた。昨夜練習した時のエンジン音より、心臓の鼓動のほうがよっぽど激しく打ち鳴っている。身に纏ったライディングギアは肌にぴったりと吸い付いていた。レザーパンツのジッパーは浅めに留め、ジャケットの胸元はわずかに素肌を覗かせるくらいに開けてある。
大輝のトラックはすでに停まっていたが、駐車場には他に誰もいない。よかった。他の連中が現れる前に、この優位な状況を確保しておきたかったのだ。
トラックから降りてきた彼と、視線が絡み合う。その瞳がゆっくりと熱を帯びて暗く沈み、まるでレザー越しに私の肌を透視しているかのようだった。
「結衣。早起きだな。それに……クソッ、雰囲気違うじゃねぇか。リードする準備はいいか?」
私は顎をツンと上げ、彼の視線を真っ直ぐに受け止めた。
「私が前を走ってみたいの。ソロでね。でも最初の数周は、あなたが後ろに乗って。ちゃんと、手を添えて」
彼は口角をニヤリと上げ、ヘルメットを二つ掴み取った。
「強気だな。そういうの、嫌いじゃないぜ。跨れよ」
私はフロントシートにひらりと跨り、太ももでタンクをしっかりと挟み込んだ。下着をつけていない秘所にレザーパンツが直接擦れ、その摩擦だけで、すでに熱い火花が散りそうだった。
大輝が後ろに跨ると、彼の広い胸が私の背中にぴったりと密着した。たくましい腕が私の腰に巻き付き、グローブ越しの手のひらがお腹の上をしっかりと覆う。彼から放たれる熱が、私の下腹部へとじわじわと染み込んでいく。
スロットルを捻ると、エンジンが獰猛な唸り声を上げて目を覚ました。
バイクが前へと弾み出し、鋭く風を切り裂いていく。
私はさらにアクセルを開け、最初のカーブへと飛び込んだ。車体が深く傾き、遠心力で私の体は背後の彼へと激しく押し付けられる。彼の手がスッと上へ滑り、私の肋骨を掴んだ――親指がジャケットの裾に潜り込み、胸の膨らみのすぐ下を掠める。
ブラをつけていないせいで、姿勢を変えるたびに敏感な先端が布地と擦れ合い、疼くような刺激が走る。
「その傾きを感じろ」耳元に吹きかかる大輝の熱い吐息とともに、低い声が響いた。
「バイクの動きに逆らうな」
「逆らう気なんてないわ」私はさらにグリップを捻り込む。目の前には、鋭いヘアピンカーブが迫っていた。
バイクが地面すれすれまでバンクし、私たちの腰が深く擦れ合う。私のお尻に押し付けられた彼の一部が、みるみるうちに硬く昂っていくのがわかった――分厚いデニム越しでもはっきりとわかるほどの熱い質量が、私に食い込んでくる。
私はわざと腰を揺すってみせた。エンジンの振動、素肌に擦れるレザーの感触、そして背後からの彼の硬さ――そのすべてが相まって、私の最奥はドクドクと激しく脈打ち始める。
レザーパンツの内側で、太ももがじっとりと濡れそぼっていく。
「もっとしっかりニーグリップしろ。振り落とされるぞ」
大輝は低く野蛮な笑い声を漏らすと、片手をさらに下へと滑らせ、レザー越しに私の秘裂を指で覆うように押さえつけてきた。
「火遊びが過ぎるぜ、結衣。お前が先にドロドロに溶けちまわないように気をつけな」
スピードを上げるにつれてエンジンの振動はさらに増し、私の脈拍と完全にシンクロしていく。下着という障壁がないせいで、車体が跳ねるたびにむき出しの蕾が直接刺激され、下腹部に狂おしいほどの熱が蓄積されていく。
カーブに差し掛かるたび、私はさらに深く車体を傾け、彼に背中を預けるように体を反らせた。
彼の息がふっと詰まり、ジッパーの上をなぞるように親指が微かに円を描き始める。胸の先端は痛いほどに勃起しきっており、段差で跳ねた瞬間、ジャケットの硬い縁がそこにこすれ上げた。鋭い快感が、子宮の奥底まで真っ直ぐに突き抜ける。
ああ、もう下着の代わりのレザーパンツはぐっしょりと濡れている。前を走って彼を先導していると、まるで彼を支配し、私のものにしているような錯覚すら覚えた。
コースを半周したところで、遠くから別のエンジン音が響いてきた。朝の教習時間だ。初心者たちが続々と駐車場に集まってきている。
私はスロットルを緩め、大きくコースを回って速度を落とした。そこへ、あの女が現れた。体のラインを強調するライディングウェアに身を包み、ポニーテールを揺らす小生意気な新入生。胸元のネームバッジには『美咲』とある。
バイクを停めてアイドリング状態にしていると、彼女は小走りでこちらへ向かってきた。私を完全に無視し、その視線は大輝にだけ向けられている。
「大輝さん? みんなが噂してる凄腕のコーチですよね?」甘ったるい声を出して、美咲はバイクのタンクに馴れ馴れしく寄りかかってきた。
「美咲って言います。今日から入校なんですけど、私もあんな風に前に乗せてもらえませんか? 先生の……『ご指導』、私ならきっとうまくこなせると思うんですけど」
大輝の腕は私の腰に回されたまま、その拘束が解かれることはなかった。彼はチラリと私に視線を寄越し、それから美咲に向かって冷淡に言い放った。
「教え方は生徒に合わせて変えてるんだ。誰にでも同じやり方をするわけじゃない。悪いな」
美咲はあからさまに唇を尖らせ、私を横目で睨んだ。
「えー、でもその人が先生を独り占めしてるじゃないですか。私なら、もっとキツく締めつけてあげられるのに。絶対そっちの方が楽しいですよ」
独占欲がカッと燃え上がった。愛車をベタベタと触られた時のような不快感。私の男? 違う。でも、クソッ、腹の底から怒りが湧いてくる。私はわざと派手にエンジンを吹かし、彼女の甘ったるい声をかき消した。
「今の時間は私の枠よ。自分のバイクでも探してきたら?」
美咲は体を起こし、鼻で笑った。
「はいはい。お堅いことで」大げさに腰をくねらせながら歩き去っていったが、去り際に向けられた鋭い睨みはいつまでも背中に突き刺さっていた。
背後から大輝の低い笑い声が響き、私の体を震わせた。
「なんだ、ヤキモチか? たまんねぇな」
私は体を半分振り返らせた。彼の手はまだ私の下腹部に置かれたままだ。強気な視線で彼を射抜く。
「新入生なら誰にでも、こんな風に後ろから張り付いて指導してるわけ? それとも、あんな風に媚びを売ってくる子にだけ?」
彼は片眉を挑発的に跳ね上げ、指先で私の腰骨をなぞりながら、ジッパーの縁をチロチロと弄った。
「それだけの価値がある奴にだけだ。お前は初心者なんかじゃないだろ、結衣。最初からな」
下腹部に溜まった熱がさらに鋭さを増す。私は彼の方へと身を乗り出し、唇が彼の顎のラインに触れるか触れないかの距離まで近づいた。ほとんどキスのような距離だ。
しかし、彼は私の顎にクイッと指をかけ、ギリギリのところで距離を保った。
「まずはコースに集中しろ。その先が欲しいなら、実力で勝ち取れよ」
「……意地悪」
大輝はバイクから降りると、窮屈そうに股間を直した。レザー越しでも、その立派な膨らみは隠しきれていない。
「ここからはソロだ。前を走る実力があるってことを証明してみせろ」
私は頷き、下半身の疼きをぐっと飲み込んだ。一人でエンジンを吹かし、コースへと飛び出す。最初の1周目は散々だった。直線では車体がブレて、カーブではハンドルの切りすぎでバランスを崩す。
後輪がズルッと滑り、心臓が跳ね上がった。クソッ。私の仕事はこれにかかっているのだ。あと3ヶ月で免許を取れなければ、あの仕事は白紙になってしまう。
コース脇から、大輝の怒号が飛んできた。
「グリップの力を抜け! 肘を外に張れ――そうだ、その調子だ!」
私は気を取り直して、次の周回に入る。スロットルを一定に保ち、よりスムーズに車体を倒し込んでいく。
忍耐強くも鋭い大輝の指導が、風切り音を突き抜けて耳に届く。
「膝を締めろ! バイクと喧嘩するな、バイクを操るんだ!」
5周目に入る頃には、完全に感覚を掴んでいた。狙い通りにカーブを抜け、スピードに乗る。エンジンの重低音が心地よく響き、太ももをブルブルと震わせた。背中に彼の手の感触はないが、彼の声が私を前へと押し出してくれる。
「いいぞ! ラスト一周――フルスロットルで行け!」
私はアクセルを全開にし、あっさりと時速60キロに到達した。アドレナリンが激しく駆け巡り、満たされない秘所がキュンと切なく収縮する。彼からの褒め言葉は、まるで直接肌を撫でられたかのように私を熱くさせた。
「完璧だ。筋がいいな」
バイクを停めてヘルメットを脱ぐ。首筋には汗が浮かび、ジャケットが肌にねっとりと張り付いていた。
周囲には他の教習生たちも集まり始めていた。遠くから美咲が恨めしそうに睨みつけてきているのが見えたが、私は完全に無視を決め込んだ。
大輝がペットボトルの水を取り出し、私に手渡してくれた。受け取る際、二人の指先が触れ合い、名残惜しむように絡み合う。
「上達が早いな。あと数回乗れば、試験なんて楽勝でパスできるぜ」
私は水を一口飲みながら、彼の無骨な顎のラインを見つめた。昨夜と同じ、無精髭の生えた顎。不意に、自分の結婚生活が脳裏をよぎる。事あるごとに肩をすくめて面倒くさそうにする夫・直哉の態度。そして、あの義務的で中途半端なセックス。
私はふとある問いを思いつき、言葉を選びながら口を開いた。
「もしも……仮の話だけど……私が直哉の妻じゃなかったら。私たち、どうなってたと思う?」
