第百十三章

マッテオの優しい声に、ジュヌヴィエーヴは全身がとろけてしまいそうだった。ごくりと唾を飲み込み、不意に震えだした手を抑えようとしながら、彼の方を振り向いた。その姿を目にした瞬間、彼女は息を呑む。オーダーメイドの黒いスーツに細い黒のネクタイを締めた彼の姿は、際立って見えた。髭はきれいに剃られ、髪は櫛で後ろになでつけられ、両手はポケットの奥深くに突っ込まれている。えくぼのできる笑みを向けられ、ジュヌヴィエーヴは膝の力が抜け、思わず後ろのスツールに腰を下ろしてしまった。

マッテオは自分の足元に視線を落としてから、彼女の方へ歩み寄った。ポケットに手を入れたまま、キャンドルをまたいでいくのを彼女はじっと...

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