第百十五章

「ブオンジョルノ」

異国の言葉に、ジェンははっと目を覚ました。マッテオが勢いよく身を起こすと同時に、ジェンをベッドにぐいと押し倒し、虚空から現れた拳銃を構えた。銃声が響き渡る。ジェンは悲鳴を上げて両耳を塞いだ。一瞬の静寂がキャビンを満たす。彼女の呼吸は浅く、速かった。おそるおそる横目でマッテオを見ると、彼はシーツを腰にまとわりつかせたまま上半身を起こしていた。必死に眠気を振り払おうと瞬きを繰り返し、片目を細めてキャビンの戸口に立つ人影を捉えようとしている。寝癖で髪は乱れ、胸が激しく上下する間も、銃口は侵入者に向けられたままだった。ジェンが戸口に視線を移すと、そこには感心した様子もないアレッ...

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