第百十九章

ジュヌヴィエーヴは、この一時間ほど浸かっていたホットタブの岩棚に頭をもたせかけた。一人でホットタブに入ったわけではなかった。ルームメイトたちは一人、また一人と時差ボケに屈し、ジェイダとルーシーはそれぞれの夫に連れ戻され、アレッシオの姉妹たちは母親に引きずられていった。

明日、彼女は結婚する。何度自分に言い聞かせても、どうにも実感が湧かなかった。ドレスは二階のクローゼットの中。ネイルも済ませた。食事のメニューも選んだ。ブーケも決めた。ほんの数時間で、夢に描いた結婚式の準備を整えたのだ。裕福な男性と結婚する特典である。

ゲンは水面に両手を浮かべながら、鼻歌を歌った。太陽はとうに沈んでい...

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