第五十六章

ジェンはゆっくりと意識を取り戻した。体は鉛を詰め込まれたように重い。腕を動かそうとしたが、びくともしない。次に脚を試したが、足首の上で縛り付けられていた。頭を持ち上げようとしたものの、すぐに力が抜けてしまう。がくんと頭が後ろに倒れた。何も見えない。目と口が何かで覆われている。

彼女が座らされている部屋は寒く、静まり返っていた。聞こえるのは、右の方で水が滴る音だけだ。ポツリ。ポツリ。――ポツリ。

「誰かいるの?」と呼びかけたが、口に詰められた猿ぐつわのせいで声はくぐもっていた。

拘束をさらに必死に引っぱる。ジェンはパニックに陥り始めた。もがけばもがくほど、縄はきつく食い込んでくるようだ。...

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