第六十七章

ジェイダが二年ものあいだ口にしなかった名前を告げた瞬間、ゲンの指の動きが止まった。彼女はコンピューターの向こうに目をやると、ジェイダが自分の膝を見つめているのに気づいた。

「デイン? 大学のころ付き合ってたっていう?」

ジェイダはにやりと笑った。「大学時代に出会ったけど、学生じゃなかった。裏社会の人間。かなりの大物だったわ。パーティーで知り合ったの。背が高くて、黒髪で、危険な香りがして。スリルを味わうにはちょうどいいくらいの悪童って感じ。でも、私には優しくて、穏やかで、思いやりがあった」。ジェイダは顔を上げた。「あなたには知らないことがあるの。私の家族のこと。お母さんと私が、あなたのパパに...

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