第七十二章

目を覚ましながら、ジェンは甘い呻き声を漏らした。脚をまっすぐ伸ばし、両手を頭の上に突き出す。満足のため息をつき、目を開けると、カーテンの隙間から差し込む朝の柔らかな光が広がっていた。瞬きすると、昨夜の記憶がラブコメのモンタージュのように頭の中を駆け巡り、思わず微笑んだ。筋肉が心地よく痛み、ここ何年もなかったほどぐっすりと眠れた。そして、空気は焼きたてのペイストリーのような香りがした。

彼女は身を起こし、部屋を見回した。マッテオと過ごした昨夜のぼんやりとした記憶の中では、彼女の意識はただ一点に集中していた。一人になり……満たされた今、新たな気持ちでこの空間を見渡すことができた。壁は淡いクリーム...

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