第6章 新しい始まり

一年後。

新しい学校の廊下に立ち、窓の外に舞い散る桜を眺めていると、まるで一世紀もの時が過ぎてしまったかのような錯覚に陥った。

あの名門校から、ごく普通の公立高校であるここへ転校してきた当初は、なかなか馴染めないだろうと思っていた。だが意外にも、ここで私は久しぶりに平穏な日々を取り戻すことができた。

「春野さん、授業が終わってもぼーっとしてるの?」

クラスメイトの鈴木さんが私の肩を軽く叩いた。

「高橋先生が、職員室まで来てほしいって」

鈴木さんはとても温かい子で、いつも声を潜めて優しく話しかけてくれる。私の過去を根掘り葉掘り聞いたりもしない。私たちが友達になったのはごく...

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