第十一章

レイモンド視点

ダコタの母親であるステラ・ブレアは、サロンの入り口近くに立っていた。エルとその一行がちょうど去ったばかりの何もない空間を見つめ、その顔を涙で濡らしている。彼女から放たれる生々しい感情は、物理的な一撃のように俺を打ちのめした。ダコタを失ったステラの悲しみはこれまでも見てきた。二年間、喪失感に苦しむ彼女を見守ってきたが、これは違った。これは希望――絶望的で、圧倒的な希望だった。

「ダコタ……」

彼女がそう囁くのが聞こえ、俺の胸は締め付けられた。

その隣にはハーパーが立っていた。俺がすっかり見慣れてしまった、心配と懐疑が入り混じった表情を浮かべて。俺が近づいてくるのに気づくと...

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