第137章

エル視点

私はブラッドを見つめた。彼はあの馬鹿げた黄色いゴム製のチキンを手に持ち、私の答えを待っている。耳が赤くなっているのを見れば答えは明白だったけれど、彼自身の口から聞きたかったのだ。

「ああ」ようやく彼が口を開いた。その声は恥ずかしさで少ししわがれていた。「それで……まだ俺のこと、怒ってるか?」

心臓が妙な具合に跳ねた。目の前にいるのは強力なアルファの人狼なのに、まるでプロムに誘うときのおどおどした十代の少年みたいだ。普段の威圧的な態度と、この不器用な脆さとのギャップがあまりに意外で、私は思わず笑みをこぼしてしまった。

「本気なの?」私は彼が強引に私の手に押し付けてきた財布を見下...

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