チャプター 16

エル視点

「ジェイソン……」かろうじて声になるほどの囁きだった。

数ヤード先に立つ彼を見つめると、心臓が肋骨を激しく打ちつけた。ジェイソン――私のジェイソン――が、ここにいる。あの砂色がかった茶色の髪。かつてはあんなにも優しく私を見つめてくれた、見覚えのある青い瞳。

一歩踏み出すと、石畳の道が裸足に冷たかった。こみ上げてくる安堵感で、涙が視界を滲ませる。彼がいる。彼なら、この定められた番いの儀式から私を救い出してくれる。

「ジェイソン!」今度はもっと大きな声で、もう一度呼びかけた。抱きしめようと両腕を広げ、彼に向かって駆け寄った。

でも、何かがおかしかった。私の方へ歩み寄るどころか、...

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