チャプター 198

エル視点

振り返ると、レスター・ハリソンが、あの紛れもないアルファ特有の自信を漂わせながら近づいてくるのが見えた。ラフなクルーズウェア姿であるにもかかわらず、彼が纏う威厳に、他の乗客たちは自然と道を空けていく。

「レスター・ハリソンだ」彼は愛想の良い笑みを浮かべて一等航海士に自己紹介した。「私はこのクルーズ会社の株主でね。ミラは私の招待客なんだ。どうやら私たちの会合の手配について、少し手違いがあったようだ」

一等航海士の態度は一変し、恭順そのものになった。「もちろんです、ハリソン様。申し訳ございませんでした」彼は軽く一礼すると、集まった野次馬たちを手際よく解散させにかかった。「皆様、どう...

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