チャプター 263

エル視点

私は呆然として言葉を失い、ただその光景を眺めていた。ブラッドがアルファとしての権威を存分に行使し、レストランの客を全員追い出したかと思うと、レイン家の専属シェフを呼び寄せて厨房を乗っ取ってしまったのだ。ものの数分で、スタッフたちは私たちがいるエリアのテーブルクロス、カトラリー、ナプキンに至るまで、すべてを総入れ替えしてしまった。

ブラッドは大きなエビの殻を剥くと、それを私の目の前に置いた。その琥珀色の瞳には、思いがけないほどの優しさが揺らめいていた。

私の決意が揺らぐ。『私たちの喧嘩はどうなったの? あの冷戦状態は? この忌々しいエビを食べるべき、それとも拒否すべき? 今朝、彼...

ログインして続きを読む