第264章

ブラッド視点

そろそろ寝ようかと思っていた矢先、ドアをノックする音がした。鋭く三回。そして沈黙。再び、三回。

ドアを開けると、そこに立っていた姿が誰だかすぐには分からなかった。レスターは、まるで地獄の道を引きずり回されてきたかのような有様だった。

俺は片眉を上げ、知りうる限り最強のアルファの一人である男の、その見る影もない姿を観察した。まるでハリケーンと殴り合って完膚なきまでに叩きのめされたような格好だ。

「カードだ」俺は冷ややかに言って、財布に手を伸ばした。「別の部屋でも取れ」

だが、俺がドアを閉めるより早く、レスターの手が伸びてきてそれを阻んだ。「お前も今夜はあまり機嫌が良くな...

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