チャプター 29

エル視点

目が覚めたとき、肌には奇妙な温もりの感覚が残っていた。まるで夜の間に何か――あるいは誰か――に抱きしめられていたかのように。けれど、カーテンの隙間から差し込む朝の光に目が慣れてくると、ブラッドの巨大なベッドにいるのは私一人だと気づいた。

夢だったのだろうか? 抱きしめられていた感覚、首筋に感じた温かい息遣いは? 隣の空いたスペースに触れると、まだ微かに温かい。心臓がどきりと跳ねた。ううん、やっぱり夢なんかじゃなかったんだ。

「マジか……」私は自分にしか聞こえない声で囁いた。彼の頭があったであろうくぼみを指でなぞりながら。「『俺のモノに触るな』が口癖のブラッド・レインが、本当に私...

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