チャプター 52

エル視点

「腹は減ったか?」ブラッドの声に、私ははっと我に返った。

彼の方を見やると、もう正午を過ぎていて、今朝からほとんど何も口にしていないことに気づいた。「ええ、お腹、空いてるわ」

「帰り道にいい店がある。ローランだ。フレンチだよ」。彼がこともなげに言う。まるで、私が高級店だろうと踏んでいるその店を、ファストフードにでも立ち寄るかのような口ぶりで。

「そこって、ミシュランの星付きレストランじゃなかったかしら?」地元のニュースで見た記憶があって、私は尋ねた。

ブラッドは道路から目を離さないまま頷いた。「シェフはフレンチアルプス出身のウルフでな。ランチメニューが絶品なんだ」

あまり...

ログインして続きを読む