チャプター 57

エル視点

胸の痛みが広がり、息をするのもやっとだった。押しつぶされそうな重圧が、一呼吸一呼吸を苦しいものに変えていく。

私はドアから背を向け、来た道を静かに戻った。彼と顔を合わせたくなかった。今は見るに耐えられない。傷口があまりにも新しく、生々しかったから。

廊下を半分ほど進んだところで、背後に足音が聞こえた。振り返らなくてもブラッドだと分かった。その歩き方のリズム、微かに漂うコロンの香りで。

「今夜は戻らない。君は休むといい」

彼は言った。その声は冷たく、突き放すようで、まるで他人と話しているかのようだった。

彼は返事を待たず、説明もしなかった。足音が遠ざかっていくのが聞こえる。...

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