チャプター 72

エル視点

会議室に足を踏み入れたとき、私はブラッドとレイモンドの間に緊張が走っているだろうと予想していた。だからこそ急いで来たのだ。だが、予想外だったのは、レイモンド・カーターが、どう見ても自分の家族の利益を損なう契約書を前に微笑んでいたことだ。

レイン・グループに有利な80対20の比率は、当初の60対40の提案と比べれば強奪同然だった。それなのにレイモンドは、椅子にゆったりと背を預け、まったく動じていない様子で座っている。何かがおかしい。カーター家を代表しておきながら、なぜブラッドに完全に言いなりにされているのだろう? そもそも、本当に彼らの利益を代表しているのだろうか?

状況を完全に...

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