チャプター 88

エル視点

「差し出がましいことを言っていなければいいのですが」アビゲイルは優しい声で続けた。「でも、今夜ここにいてくださったこと、どうしてもお礼が言いたかったんです」

『私に感謝?』私は不意を突かれて瞬きした。「感謝って、何に?」

彼女の表情はさらに和らぎ、どこか脆ささえ感じさせた。「ダコタが逝ってしまってから、みんなかなり落ち込んでいたんです。もちろん、あなたがダコタではないことは分かっています――当然です――でも、あなたがこうして健康で、生きてここにいてくれるのを見ると……なんだか不思議な安らぎを覚えるんです。もしかしたら、ダコタもまだどこかで生きているんじゃないかって」

「私の存...

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