第1章

 二年前の「番の儀」でのこと。私の運命の番であるアルファ・ジェイソンは、群れの者たち全員の注視の中で私を拒絶した。彼が選んだのは義妹のマギー。理由は単純明快、彼女が純血の狼であり、私が「狼を持たない」ただの出来損ないだったからだ。

 そして二年後――。私は新たな番と共に、このブラックウォーター領へと帰還した。

 領地の境界に広がる森の入り口で、私はジェイソンと出くわした。あろうことか彼は、群れの「利益」とやらを盾に取り、義父の夜伽の相手を務め、さらには彼の新しい番の侍女として仕えろと私に命じてきたのだ。

 彼がせせら笑っていた「狼を持たない」出来損ないが、今や北アメリカ全土で最も畏れ敬われる存在――「月の女王」その人であることなど、知る由もなかったのだ。

 冷たい風が地面の土埃を巻き上げ、道端に停車している黒塗りのSUVのスモークガラスに容赦なく叩きつけている。

 少し離れた場所では、下位の狼男二人が、巨大な真紅のベルベットの横断幕を広げようと悪戦苦闘していた。

 強風が布地を激しく煽る中、鈍色の空の下で、そこに金箔押しされた文字が鋭い光を放った。

「私のルナ」――と。

 私は思わず口元をほころばせた。今朝出発する際、ドラコンは私を出迎えるために「現地における最高級の礼遇」を手配したと口にしていたからだ。

 いかにも彼らしいやり方だ。こんな辺境の地であっても、彼だけが使うその甘い愛称を掲げることで、私が自分の所有物であることを周囲に見せつけずにはいられないのだ。

 だが、胸に広がったその心地よい温もりも、ほんの一瞬で冷め果てた。

 横断幕の真下に立つ男――オーダーメイドのスーツのポケットに両手を深く突っ込んでいるその姿を視界に捉えた瞬間、全身の血の気が引くのを感じたのだ。

 私を迎えに来たのは、ドラコンの腹心の部下などではなかった。

 カフスボタンを苛立たしげにいじりながら、横断幕に悪戦苦闘する部下たちに一瞥もくれようとしないその男。それは他でもない、かつて私をゴミのように捨てた張本人――アルファのジェイソンだった。

 私はこみ上げてくる吐き気を必死に飲み込み、森の暗がりからゆっくりと歩み出た。

 ジェイソンの部下たちは、今か今かと車列の到着を待ちわび、道路の先へと首を伸ばしていた。その中の一人、とりわけ目の良い男が、単身で歩いてくる私の姿に気がついた。

「ジェイソン様、あれは……クラウディアじゃないですか?」男は自分の目をこすりながら、信じられないといった声を出した。「二年前にジェイソン様が追放した、あの出来損ないの?」

 ジェイソンの動きがぴたりと止まった。彼がこちらへ顔を向けると、上位者を出迎えるはずの期待に満ちた表情は瞬時に消え失せ、代わりに虫酸が走ると言わんばかりの嫌悪の表情が浮かんだ。

「クソッ。朝からなんて不快なモンを見せやがる」

 彼は顔の周りを飛び回る蝿でも追い払うかのように、シッシッと手を振った。「やっぱりな。狼を持たないあんなクズが、外の世界で生き延びられるわけがないんだ。どうせ残飯を漁る野良犬みたいに、這いつくばって泣きついてくると思ってたぜ」

「よく二年間も野垂れ死なずに済んだもんだな?」

 部下たちの間から、容赦のない嘲笑がドッと沸き起こった。群れに属する者が、追放された者に向ける特有の冷酷な優越感だ。「少しは骨があるのかと思いきや! 結局、泣きを入れて戻ってきたってわけかよ」

「見ろよ、あの羽織ってるボロ布。まともな毛皮の欠片もねえ。きっと人間のゴミ捨て場から拾ってきた惨めな布切れなんだろうぜ」

 ジェイソンの部下の一人が、わざとらしく鼻をクンクンと鳴らして大声でせせら笑った。「匂いを嗅いでみろよ――フェロモンがまったくしねえ。体が弱り切ってて、もう狼に転化することすらできねえんじゃねえか?」

 彼らがそう勘違いするのも無理はない。

 かつての私はジェイソンの気を引こうと、高位の雌狼の匂いに似せた安物の香水を全身に浴びるように振りかけていた。それはただ、私の惨めな必死さを際立たせるだけの結果に終わっていたけれど。

 だが、今の私にはもうそんな小細工は必要ない。

 私は今、身籠っている。そのためドラコンは、胎児の発育に少しでも影響を及ぼす可能性のあるものの使用を一切禁じた。それどころか、この最高級の隠蔽用マントまで無理やり着せられているのだから、たまったものではない。

 この田舎者たちには到底理解できないだろう。一見すると粗末なこの布地が、実は王室にのみ許された最高等級の防具であることなど。オーラと匂いを完全に遮断することこそが、このマントの真の目的なのだから。

 しかし、彼らの言葉はさらに深く、あまりにも皮肉な真実を浮き彫りにしていた。

 ジェイソンは伝説の「月の女王」に媚びへつらうため、あんな滑稽な横断幕まで用意して待ち構えている。自分が待ちわびているその「月の女王」が、他でもない今目の前に立っている女だとは夢にも思わずに。

 部下たちの集団の最後尾では、足を引きずった年老いたオメガが、献上品が詰められた重い木箱を背負い、今にも倒れそうになりながら必死に耐えていた。

 厩舎の清掃係であるマークだった。何年も前、彼がほんの些細なミスでジェイソンに処刑されそうになった時、私が密かに命乞いをして助けた老オメガだ。

 彼は私の視線に気づいた。そのしわだらけの手が震え、この屈辱的な空気を打ち破ろうとするかのように、足を引きずりながら数歩前に出た。「クラウディア様……何はともあれ、ご無事で何よりです。お姿を拝見するに――」

「ガァァァッ!」

 雷鳴のようなアルファの咆哮が爆発し、老人の言葉を遮った。マークは膝から崩れ落ち、本能的な恐怖に震えながら泥の中に這いつくばった。

「黙れ、この老ぼれが。誰が野良犬に口を利いていいと言った?」

 ジェイソンは老人に一瞥もくれなかった。ただこちらに向き直ると、まるで奴隷を品定めする人買いのような目で、私を上から下まで舐め回すように見た。

「だが、這いつくばって戻ってきたからには、ちょうどいい。手間が省けるというものだ」

 何か名案を思いついたとでも言うように、彼の唇に冷酷な笑みが浮かんだ。「ちょうど空きがあってな」

「お前の義父――アイアンクローの群れのアルファ・ヴァルグだ。あの男は、お前の役立たずの母親が死んで以来、発情期を安定させるための雌狼を欲しがっていてな」

 彼は一歩近づき、隠しようのない傲慢さをひけらかしながら言った。

「我々の群れ同士の領土同盟を強固にするため、お前を奴の番として送ってやる。狼に転化できないお前に残された唯一の使い道は、その体くらいのものだからな」

 まるで私に多大な慈悲を施してやっているのだと言わんばかりの、事務的な口調だった。

 あの暴力的でスケベな老人の元へ私を送るだと? 利益のためなら何でも売り飛ばすジェイソンだからこそ口にできる、おぞましい提案だった。

 あいにくだが、私はもう愛を乞うてへりくだるような愚か者ではない。

 彼に黙れと言い放とうとしたその時、ジェイソンは悪意に満ちた打算で顔を歪め、さらに傷口をえぐるような言葉を続けた。

「奴に嫁いだ後も、暇を持て余すとは思わないことだ。マギーがもうすぐ出産を迎える。未来のアルファの後継者であり、この上なく高貴な血統だ」

「彼女には従順な侍女が必要だ。産褥の血の始末であれ、赤子の排泄物の処理であれ……『狼を持たない者』であるお前を役立てることこそが、一族への最後の貢献というものだろう」

 二年経っても、ジェイソンは相変わらずの身勝手なクズだった。反吐が出る。

 部下たちは即座に野次を飛ばし始めた。先頭に立つのは副官であるベータだ。彼は気だるげに口笛を吹き、まるで欠陥品でも見るかのように私を値踏みした。

「聞いたか、クラウディア? ジェイソン様がお前に生きる道を与えてくださるんだとよ!」

 彼は私に向かって二歩近づき、優越感をしたたり落とすような声で言った。「老ヴァルグのところに送られるのはキツいかもしれないが、少なくともジェイソン様は、お前が戻ってきて未来の後継者に仕えることをお許しになったんだ」

「恩知らずな真似はするなよ」

 もう一人の部下が大げさに後ずさりし、鼻をつまんだ。

「その通りだ。お前みたいな『狼を持たない』クズが、純血のアルファの赤子に触れることを許されるなんて――たとえそれが糞の始末だとしても――お前みたいな下等な生き物にとっては、これ以上ない浄化の儀式ってもんだろう」

「なんせ」と、彼は悪意に満ちた笑みを浮かべた。「俺たちの高貴な爪を、そんな汚仕事で汚すわけにはいかねえからなあ?」

 私はマントの下で腹部にそっと手を当てながら、ジェイソンが近づいてくるのを見据えた。

 彼は再び高価なスーツの襟を正し、勝者という偽善的な仮面を被った。「あそこで跪いて待っていろ。忘れるな、俺にこんなことをさせたのはお前自身だぞ」

「あの時、お前がそこまで役立たずでなければ、ほんの少しでも狼の魂を覚醒させていれば、こんな結末にはならなかったんだ」

 その言葉を聞いて、私はただ冷たい笑いがこみ上げてくるのを感じた。

 彼は本気で、私が恥辱にまみれ、打ちのめされた犬のようにうなだれて運命を受け入れるとでも思っているのだ。

 彼の目には、妊娠した愛人を本当の妻にし、私を義父に売り飛ばすことなど「群れのための必要な犠牲」に過ぎないのだ。

 かつて吹雪の中で狼に転化し、私が凍えないようにその温かい腹で包み込んでくれたあの少年は、とうの昔に死んだ。

 評議会と戦ってでも私を永遠に守ると誓ったあのジェイソンは、ただの笑い話だ。

 いいだろう。そんな馬鹿げた思い出など、この森の腐葉土にでも還してやる。

 結局のところ、ジェイソンは真実など夢にも思っていないのだ。

 彼がそれほどまでに重宝し、私の前で見せびらかしているそのちっぽけなアルファの血統など、私の胎内で脈打つ生命に比べれば、足元の泥にも等しいということを。

 なぜなら、これはただの狼の子ではない。

 ――「狼王」の、王家の血統なのだから。

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