チャプター 2

フレイヤ視点

五年後

ムーンライト・バレー空港

私は、懐かしくもあり、どこか他人のようにも感じるこの場所を呆然と見つめていた。心の中では様々な感情が渦巻いている。狼としての私の鋭い感覚が、故郷の群れの縄張りの匂いを再び捉えていた。

五年。本当にそれほどの月日が流れたのだろうか?

前回ここにいた時、私は狼の姿で雷雨の中を三時間も走り続け、ゾーイの群れに辿り着いたのだ。必死で、ボロボロになって。

彼女には感謝してもしきれない。人生で最も暗い時期を、彼女のおかげで乗り越えることができたのだから。

あの悪夢の直後、妊娠が発覚した。ゾーイの励ましを受け、私は三匹の狼の子を産んだ。

子供たちのため、そして自分自身のために、私は誰も私を知らない東部のより発展した群れへ向かうという大胆な決断をした。

ゾーイはそれを知ると、何も言わずに父親に買ってもらったブランド時計を売り払い、再出発の資金として私に渡してくれた。

親友という言葉だけでは、到底言い表せない存在だ。

一台の赤いフェラーリが空港を後にした。

車内では、三人の小さな子供たちがぐっすりと眠っている。

ハンドルを握っているのは親友のゾーイ・スミス。「ドーン・パック」の跡取り娘だ。

「フレイヤ、あんた正気?」ゾーイはバックミラー越しに私を見て言った。後部座席では三人の子供たちが眠りこけている。「東海岸で大成功してるじゃない。セレブたちがこぞってあんたのデザインを奪い合ってるのよ。それを捨てて、何のために戻ってきたの?」

私は見慣れた街並みが過ぎ去るのを眺めた。「『クラウン&ジェム』があっちでの給料の三倍を提示して引き抜きに来たのよ。戻るに決まってるでしょ。それに、私のものを取り戻さなきゃいけないしね」

『クラウン&ジェム』は母が生涯をかけた仕事であり、亡き母の唯一の形見だ。あの性悪女のティファニーに渡したままになんてできない。

「あの性悪ティファニーのせいで、会社は経営破綻寸前よ。実質死に体ね」ゾーイはニヤリと笑った。「まあ、アレクサンダー・リードを捕まえたことだけは褒めてあげるけど。運のいい女だわ」

「でも、大金を積んで雇ったジュエリーデザイナーがあんただって知ったら、あいつ卒倒するんじゃない?」

ゾーイは笑いをこらえきれない様子だった。「そいつはとんだ見世物になりそうね」

アレクサンダー? 全てが狂う前に私が結婚するはずだった、あの男のことだろうか?

考えれば考えるほど、その可能性は高かった。「ムーン・シャドウ・パック」のアルファ家系が「タイタン・インダストリーズ」を所有していた記憶がうっすらとある。

車は『クラウン&ジェム』の入り口に止まった。私を降ろすと、ゾーイは子供たちを連れて自宅へと向かった。

『クラウン&ジェム』の面接室に入ると、三人の審査員から課題を出された。その場で「時の痕跡」というテーマのジュエリーをデザインしろというものだ。

彼らはロッキーマウンテン・パックのトップジュエリーデザイナーであるマイクも評価役として招いていた。

これは、東部の群れから帰還した「トップデザイナー」とやらである私に、本当に実力があるのかを試すテストだった。

全てはティファニーが仕組んだ評価試験だ。年俸五千万ともなれば、厳しく審査しないわけにはいかないだろう。

もし私のデザインが巨匠をも唸らせれば、予算は有意義に使われたことになる。もし私が口先だけで中身がなければ、即刻追い返されるはずだ。

望むところだ。

制限時間は二時間。私はわずか三十分でデザインを完成させ、提出した。

係員が私の作品を別室で待機していたマイクの元へと運んでいく。

十分後、白髪の老人が部屋に駆け込んできた。

「このデザインは、『時の痕跡』の本質を見事に捉えているね。コンセプトスケッチを見ただけで、完成した作品がいかに素晴らしいものになるか目に浮かぶようだ。細部まで巧みに処理されているし、伝統的なパックのトーテムの要素まで取り入れている。これは傑作だよ!」

私の顔に自然と笑みがこぼれた。こういった称賛の言葉は、いつ聞いても悪い気はしない。

「ところで、君のデザイン哲学は何だい?」マイクが不意に尋ねた。

「インスピレーションの源は、ムーンライト・バレーの自然美です。ダイヤモンドは永遠と純粋さを象徴しています。まるでパックの絆のように……」

彼は熱心に頷いた。「素晴らしいデザインだ。正直なところ、私でもここまではできないだろう。この業界で五〇年以上やってきたが、本物の才能というものを目の当たりにした気分だよ」

マイクの絶賛ぶりに、面接官たちは落ち着かない様子だった。

そのうちの一人が電話をかけるために席を外した。おそらくティファニーに吉報を伝えるためだろう。

「ええ、わかりました!」電話を切った面接官が私に微笑みかけた。「クリスタルさん、ボスがマイクの評価を聞いて、ぜひ直接お会いしたいとのことです」

アレクサンダーのオフィスに近づくと、ちょうどティファニーが私を褒めちぎっている声が聞こえてきた。

「アレックス、あなたの審美眼には感謝しなきゃね。クリスタルはすごわよ。彼女なら間違いなく『クラウン&ジェム』を起死回生させられるわ」

これを聞いて、私は思わずニヤリとしてしまった。クリスタルが私だと知った時のティファニーの顔を見るのが待ちきれない。

面白いことになりそうだ。

私はドアをノックした。

「入れ」

オフィスのドアを押し開け、中へと足を踏み入れる。

「『クラウン&ジェム』へようこそ、クリスタル氏――」

私を見た瞬間、ティファニーの声が途切れた。

その時の彼女の表情といったら、まさに傑作だった。

「私のことはお気になさらず」私は言った。「私がどれほど素晴らしいか、何か話していたようですが?」

冷静さを失ったティファニーは、丁寧に作り上げてきたイメージをかなぐり捨てて金切り声を上げた。「警備員! あなたたち何のために高い給料をもらってるのよ!? どうしてこんなゴミクズを会社に入れたの? さっさとつまみ出して!」

駆けつけた警備員たちは、声を潜めて説明しなければならなかった。「彼女がクリスタルさんですよ。アルファ・アレクサンダーが雇ったデザイナーですが……」

「はあ?」ティファニーは野球ボールが入りそうなほど大きく口を開けて呆然とした。

「彼女があの有名なクリスタルなわけないでしょう? 間違いじゃないの?」

警備員たちは頷いた。彼らは入り口で私の身分証を確認済みだったからだ。

「ありえない!」

ティファニーは必死になって確認の電話をかけ始めた。

彼女が取り乱す様を見て、私は笑いを堪えきれなかった。これほど愉快な見世物はない。

アレクサンダーは眉をひそめていた。ティファニーの錯乱ぶりは、彼をひどく苛立たせているようだった。彼は何も言わず、ただ私に視線を向けた。

同時に、私もアレクサンダーの方を見た。

目が合った瞬間、周囲のすべてが色褪せて消え去ったようだった。

彼はまさに期待通りのアルファだった。長身で、彫りの深い顔立ち。そして全てを見通すような琥珀色の瞳。

だが、何よりも私を驚愕させたのは、アレクサンダーの顔だった!

彼の顔を見て、全身の血が凍りつくような感覚に襲われた。

彼はリーバイに瓜二つだったのだ。私の末息子に。あの琥珀色の瞳も、考え込む時の表情も、まったく同じだ。

こんな偶然があるだろうか?

私が凝視しているのに気づいたのか、ティファニーが慌てて二人の間に割って入った。

「何を見てるのよ?」彼女はそう怒鳴ったが、その声には焦りが滲んでいた。

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