チャプター 40

フレイヤ視点

空気が吸いたい。どうしても。

舞踏会場の外にあるテラスへ出ると、夜風がまるで救いのように感じられた。胸にはまだ、アレクサンダーのジャケットを強く抱きしめている。その布地からは彼の匂いがした。松と雨、そして私の内なる狼の喉を鳴らさせる、あの狂おしいほどの香り。

『しっかりしなさい、フレイヤ。ただのフェロモンよ。生物学的な反応。それだけ』

しかし、早鐘を打つ心臓はそれを否定した。

「フレイヤ!」

振り向くと、ゾーイが近づいてくるのが見えた。彼女の視線はすぐに、私の腕の中にある黒いスーツのジャケットに釘付けになった。その表情はたった二秒で、心配から純粋な悪戯心へと変わった。...

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