チャプター 72

フレイヤ視点

回想:

新しいネックレスのデザインの細部をスケッチするのに夢中になっていると、携帯が鳴った。

表示された発信者名に、血の気が引いた。ティファニー・オースティン。

わざと冷たく言い放って電話に出た。「何の用?」

「あら」スピーカーから聞こえるティファニーの声は、偽りの甘ったるさに満ちていた。「大事な可愛い狼ちゃんたちに何が起きてるか知らない割には、ずいぶん落ち着いてるのね」

全身の神経が、一斉に警戒態勢に入った。震えだした指から、スケッチペンが滑り落ちる。

「一体、何の話をしてるのよ!」私は椅子から立ち上がり、声を荒げた。

ティファニーの笑い声は、割れたガラスのよう...

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