第151章

エルサ

彼の腕が私に強く巻き付き、片手が後頭部を支えるようにして抱き寄せられる。彼の顎が、私の頭頂部に乗せられた。頬の下で規則正しく脈打つ彼の心臓の鼓動が、自分自身の高鳴る鼓動とは対照的だった。

「君が僕を抱きしめてきたのは、この十年で初めてだ、エルサ」低い、胸に響くような声で彼が囁いた。「君からしてきたなんて、初めてのことだ」

私はこわばった。自分が何をしているのか――十年もの間、私を操り、支配してきた男に、弱さ、感謝、そして最悪なことに、愛情まで見せていることに、はたと気づいたのだ。今もなお、私を操っている男に。私をリードにつないだまま、町で他の女を見せびらかしていた男に。

『一体...

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