チャプター 196

エルサ

ドレイクの瞳が、長い間じっと私を捉えていた。やがて彼は車のドアを開け、外に降り立つ。非の打ちどころのないスーツに身を包んだ彼は、どういうわけか、ただの歩道を自分の領地であるかのように見せていた。

「夕食に連れて行かせてくれ」と彼は言った。それはいつものような命令口調ではなかったが、かといって純粋な頼み事でもない。

私が返事をしないでいると、彼は「詫びのつもりだ」と付け加えた。

「いい考えだとは思えないわ」私はそう答え、彼に背を向けた。震えを止めようと、両手を体の脇で固く握りしめる。

「エルサ」

その名前の呼ばれ方に、私は思わず足を止めた。

「頼む」

振り返って彼を一瞥し...

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