第二十八章

エルサ

彼の後ろ姿を、私は呆然と見つめていた。口がぽかんと開いてしまっている。あのドレイク・ストーンが、口論から身を引くなんて? 他人に最後の言葉を言わせておくなんて? あまりに彼らしくなくて、幻でも見たのかと思ったほどだ。椅子に深く沈み込むと、急に脚から力が抜けた。

ブルースは私を二階のダイニングエリアへと案内した。腰のあたりに置かれた彼の手は、ドレイクのそれとは違う、肌が粟立つような不快感をもたらした。私たちは窓際のテーブルに腰を下ろした。私は何度も外に目をやった。そこではドレイクが小雨の中、どうやら誰かを待っているように立っていた。雨水が高価なスーツの色を濃く染めていたが、彼が雨宿り...

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