第二十四章

エルサ

「そう言うと思った」彼の指先に心臓が早鐘を打ち、思わず口元に小さな笑みが浮かんでしまう。「でも、一言くらい警告してくれてもよかったんじゃない。今日がその日だってこと、すっかり忘れるところだったわ」

彼の手が、私の手を握る力を強めた。「考える時間を与えすぎると、お前が怖気づくのは分かっていた」彼の親指が、ムーンストーンの指輪を撫でる。「だからこれを渡したんだ。――保険だよ」

「あなたって最低ね」私は熱のない声で言って、ふざけて彼の胸を押した。

「それでも、お前はここにいる」彼の瞳が、面白がるような色と、もっと深く、独占欲に満ちた何かをきらめかせた。「俺の妻になる準備万端でな」

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