第246章

エルサ

ドレイクの車は、革と松の匂いがした。彼の匂いに、もっと暗く、もっと原始的な何かが混じり合っていた。助手席で体を硬くした私は、窓の外を眺め、流れていく街の灯りを見つめていた。手のひらには爪が食い込んでいる。指の間でドレスの生地を握りしめたり、ほどいたりを繰り返す。そのリズムは、めまぐるしく駆け巡る思考と重なっていた。

クソッ、どうして彼のそばにいるだけで、まだこんなに緊張しちゃうわけ?

「辞表はもう書いたのか?」ドレイクの声が沈黙を破った。滑らかで、有無を言わせぬ響き。私の背筋を否応なく伸ばさせる、あの権威的な響きがそこにはあった。

奥歯を食いしばる。彼の方を向き直ると、胸の内で...

ログインして続きを読む