チャプター 87

エルサ

病院の正面玄関を出ると、午後の眩しい日差しがまるで私を嘲笑っているかのように感じられた。こらえきれなかった涙で目は熱く、診察室で嗚咽を噛み殺していたせいで喉はひりひりと痛む。階段で少し足がもつれ、手すりにしがみついた。膝が笑ってしまって、力が入らない。

「俺の継母と、一体何をしていた?」

その冷たい声は、刃物のように私の思考を切り裂いた。凍りついた私は、振り返るまでもなく背後に誰が立っているか分かっていた。彼の匂い――高価なコロンと権力、そして純粋なアルファの雄の匂いが入り混じった、あの忌々しくも陶酔させる香りが、独占欲の強い手のように私を包み込む。裏切り者の私の身体は、瞬時に熱...

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