チャプター 1
エレナ視点
私は小さな青いセーターを編んでいた。膨らんだお腹のせいで毛糸を持つのが不便だったけれど、赤ちゃんたちが生まれる前に、せめて一揃いは服を完成させたいと心に決めていた。出産予定日はまだ一ヶ月も先だというのに、いつ陣痛が始まってもおかしくないと医者には言われている。
ふと、廊下の外から潜められた話し声が聞こえてきて、私は手を止めた。
「アルファが今夜お戻りになるそうだ」と、屋敷の使用人の一人が言った。
心臓が跳ねた。リチャードが帰ってくる? もう二週間近くも帰ってきていないのに。私は編み物をそっと置き、お腹に手を押し当てた。お腹の中で赤ちゃんたちが動くのを感じる。
「聞こえた、小さな子たち? パパが帰ってくるのよ」。私は微笑んだが、その笑みは心からのものではなかった。「パパはママのこと、あまり好きじゃないかもしれないけど、あなたたちのことはきっと愛してくれるわ」
それは完全な真実ではなかった。彼がこの子たちを愛してくれるかどうか、私にはまったく分からなかった。私たちの結婚は、ウィンターとブラックウッド、二つの人狼の群れの間に結ばれた単なる同盟関係に過ぎなかったのだ。私の家族は競争に敗れて地位を失い、彼らの縄張りへ移住することを余儀なくされた。強力なナイトフォールの群れに嫁ぐことは、私たち一族の安全を保障するためのはずだった。
ただ、リチャードは私が彼の選んだ相手ではないことを明確にしていた。
それに私は、まだ人狼として覚醒すらしていなかった――私たちの一族では珍しいことだ。自分がいつか無事に人狼として覚醒できるのか、それさえも定かではなかった。
どうにか力を振り絞って立ち上がる。彼が帰ってくるのなら、何か食事を用意してあげたかった。彼の大好物であるローズマリー風味のラムチョップなら、その常に氷のような態度を和らげてくれるかもしれない。
* * *
玄関のドアが開く音が聞こえ、彼を出迎えようとキッチンから出た私は、彼の隣にいる女性を見て、足が止まった。
彼の父ジェラルドと母ライリーも、階上から下りてきた。
「リチャード、これはどういうことだ?」ジェラルドの権威ある声が轟いた。「この……女を家に連れ込むとは? 身重の妻がここにいるというのに?」
私は凍りついた。彼を問い詰めたかったが、口を開くことができなかった。私たちの関係は紙のように脆く、簡単に破れてしまう。リチャードは完璧に仕立てられた黒いスーツに身を包み、その栗色の髪は非の打ち所なく整えられていた。彼の隣の女は、その腕に自分の手を絡ませている。
リチャードの表情は無表情なままだった。「父さん、母さん、こちらはヴィクトリアだ。もう、ふりをするのはやめるべきだと思う」
ライリーが一歩前に出た。「何のふりですって? いったいどういうことなの?」
「このエレナとの結婚が、そもそも俺の選択だったというふりを、だ」。リチャードの言葉が、鉤爪のように私を切り裂いた。「あんたたちがウィンター家と取り決めたこの政略結婚は、あんたたちの決定であって、俺のじゃない。ヴィクトリアこそ、俺がずっとメイトとして望んできた女性だ」
ヴィクトリアは微笑み、その赤い唇が勝利を確信したように弧を描くと、リチャードの腕をぎゅっと握った。
「正気か?」ジェラルドが唸った。「エレナはそなたの子を、跡継ぎを身ごもっているのだぞ」
「それも、あんたたちが俺に薬を盛った結果だろう」。リチャードは冷たく言い返した。「もちろん、子供たちの面倒は見る。だが、これ以上この茶番を続けるつもりはない。ヴィクトリアにはここに住んでもらう。エレナの産後の肥立ちが済んだら、然るべき手配をする」
私は何か声を発してしまったのだろう。突然、すべての視線が私に向けられた。彼の言葉で胸を貫かれた痛みなど、突如として腹部を襲った激しい痙攣に比べれば何でもなかった。
「エレナ……」。ライリーが、目に心配の色を浮かべて私に歩み寄った。
後ろによろめき、片手で大理石の柱に掴まり、もう片方の手で腹を押さえた。何か温かいものが脚を伝い落ちていく。
「あなた……」再び痛みの波が襲い、私は息を呑んだ。
リチャードの表情は変わらなかったが、その瞳に一瞬、何か――狼狽だろうか――がよぎるのが見えた。
痙攣は激しくなり、温かい液体がどっと流れ出るのを感じた。だが、それはただの破水ではなかった――足元に広がった液体は、鮮やかな赤色だった。
「エレナ!」私の脚から力が抜けたのと同時に、ライリーが駆け寄ってくる。
私はリチャードの瞳を睨みつけ、内なる怒りを込み上げさせた。「もし、私の子どもたちに何かあったら」と、歯の間から吐き出すように言った。「お前に二度と安息が訪れないよう呪ってやる。お前の夜は苦悶に満ち、昼は影に覆われるだろう。リチャード・ブラックウッド」
闇に意識を奪われる直前、最後に見たのはヴィクトリアの微笑みだった。
痛みの海を漂っているような感覚だった。陣痛が来るたび、巨大な波に飲み込まれるかのようだ。分娩室の照明が目に突き刺さり、汗で髪が濡れ、頬に張り付いている。
「一人目が出たわ! 女の子よ!」
ジェイシーの興奮した声に続き、赤ちゃんの甲高い産声が聞こえた。微笑みたかったが、口角を上げる力さえ残っていないことに気づく。再び痛みの波が襲い、私は歯を食いしばった。
ジェイシーが私の手を握ってくれていたが、その指先が震えているのが分かった。親友がそばにいてくれるのはありがたかった。でも、彼はいない――彼は本当に、私に対して何も感じていなかったのだろうか。
「エレナ、しっかりして。痛いのは分かるけど、もう一度いきまなきゃ」ジェイシーの声には、隠しきれない不安が滲んでいた。
返事をしたいのに、意識がどんどん霞んでいき、不吉な予感が全身を覆った。
モニターが甲高いアラーム音を鳴らし始め、医療スタッフたちが慌ただしく動き回るのが聞こえる。
「血圧低下! 心拍数不安定!」
「エレナ! 寝ないで! 子供たちのことを考えて!」
命がゆっくりと流れ出ていくのを感じた。意識が混濁していく。私の子どもたち、私の赤ちゃん……。
痛み。暗闇。そして、光。
止まっていた肺に空気が流れ込み、私は喘いだ。体が引き裂かれ、同時に再構築されるような感覚だった。
「ああ、よかった、エレナ! やっと目が覚めたのね」ジェイシーの声は涙に濡れていた。
私は目を見開いた。世界が……違って見えた。より鮮明に。分娩室の外で泣き声が聞こえる。ライリーのようだ。消毒液、血、恐怖、そしてもう一つ……私の子どもたちの匂いがした。
「赤ちゃんは」と、私はかすれた声で言った。「私の赤ちゃんは――」
「一人目は無事よ。でも二人目と三人目はまだお腹の中に! あなたの心臓が止まって、あなたも、お腹の子も危なかったの! でもあなたが目覚めた、あなたの内なる狼があなたを癒しているのよ。あなたなら子供たちを救えるわ!」ジェイシーは喜びに満ちた声で言った。
その時、感じた――変化が私の中を駆け巡るのを。私の中の狼が目覚めたのだ。長い間その存在を感じられなかったのに、この危機的瞬間に、ついに彼女の気配を感じ取った。体が絶え間なく回復していく。
「助けて」私は息を切らしながらジェイシーの手首を掴んだ。「子供たちを助けるのを手伝って。そして、私が消えるのを手伝って」
「え?」一瞬の混乱の後、彼女は私の意図を理解した。「どうすればいいの?」
「みんなに、私は死んだと伝えて。そして、子供たちと一緒に私をここから出して。あの男のところへは二度と戻らない」
再び陣痛が体を引き裂く中、私は決意した。エレナ・ブラックウッドは今夜死ぬ。だが、私と子供たちは生きるのだ――リチャードと彼の非道さから遠く離れた場所で。
