第十一章

リチャード視点

彼女の血を見て、俺の中の原始的な何かが燃え上がった。

庭を駆け抜け、見物人たちを押し分けて、くずおれた彼女の体に駆け寄る。彼女と話していた見知らぬ男は、顔に衝撃を浮かべたまま凍りついていた。

「エレナ、目を覚ませ、エレナ!!」俺は叫びながら、ぐったりとした彼女の体を腕に抱き寄せた。

「なんてこった」男はエレナの血まみれの顔を見つめてつぶやいた。「まさかこれほど……極端なことをするとは。額のあの箇所なら催眠暗示を破れるが、出血のリスクが――」

「黙れ」俺は唸り、エレナをきつく抱きしめた。震える手で、血に濡れた髪を彼女の顔から払いのける。銀のかんざしが彼女の傍らの地面に落...

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