第129章

リチャード視点

彼女は眠っていた。ようやく。

俺は暗闇の中に立ち、深い眠りのリズムに合わせて上下するエレナの胸を見守った。窓から差し込む月光が彼女の顔に影を落とし、数時間前にはなかった蒼白さを際立たせていた。

「強情な女だ」俺は息を吐くように呟き、ベッドに近づいた。

暗闇に完全に順応した俺の目は、彼女の顔のあらゆる細部を捉えた。六年という歳月は、当初俺が思っていたほど彼女を変えてはいなかった。同じ繊細な顔立ち、起きている時には決して見せない無防備な寝顔。

「まだ痛むか?」返事が返ってくるとは思わず、俺は優しく問いかけた。

驚いたことに、彼女の唇がわずかに開いた。

「……もう、痛く...

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