第145章

リチャード視点

ブラックウッドタワーの最上階に足を踏み入れた。すでに夕刻だったが、最上階は煌々と明かりが灯され、会議室は人で埋まっていた。

イーサンのデスクをまっすぐ通り過ぎる。彼の驚いた表情も、山積みの緊急ファイルも無視した。背後で執務室のドアがカチリと心地よい音を立てて閉まる。コーヒーを一杯淹れると、会議室のことは完全に無視してソファに腰を下ろし、休息を取った。

ノックもなくドアが開く。そんな真似をするのはイーサンくらいのものだ。

「アルファ」彼の声はどこか強張っていた。「役員会は会議室で一時間以上もお待ちです。お父様が――」

俺はカッと目を見開いた。「親父が?」

「はい。ジェ...

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