チャプター 15

エレナ視点

「失礼ですが、どちら様でしょうか?」

振り返ると、ひとりの女性使用人が冷たい猜疑の目を向けていた。

「エレナ・ウィンターです。リチャードの病気の治療を手伝いに来ました」胃が締め付けられるような不安を抑え、私はなんとか声を平然と保って答えた。

彼女の表情は少しも和らがなかった。「ブラックウッド様からは本日、特にこのような時間にお客様がお見えになるという話は伺っておりません」

「イーサンが手配してくれたんです」と私は説明した。けれど、これがイーサンの仕掛けた罠であることは、すでに察しがついていた。リチャードが自ら進んで私に会おうとするはずがない。

「申し訳ありませんが、お引...

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