チャプター 16

エレナ視点

「うまくいった……」安堵感が全身に広がり、私は自分にそう囁いた。「少なくとも、今夜は彼もゆっくり眠れるでしょう」

私は手を引いた。指先にはまだ、治癒エネルギーのかすかな輝きが残っている。深呼吸をして、かつての番の近くにいたことでざわめき立った、自分の中の狼を落ち着かせようと試みた。

リチャードの寝顔を見つめながら、今の彼はなんと違って見えることだろうと思わずにはいられなかった。誇り高きアルファが、今や自らの狼の本性に苦しめられている。いつもは硬く、決して屈することのない彼の顔が、眠りの中ではどこか無防備に見えた。

「もう行かなくちゃ」私は呟いた。「ここはもう、私の居場所じゃ...

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