第170章

キャシー視点

私は隅に立ち、リリーの手を固く握りしめながら、ボールルーム全体を見渡していた。誰もが綺麗な服を着ているけれど、私が探しているのはたった一人だけ。

ママ。

「キャシー、ママを見た?」リリーが尋ねてきた。

「ううん」と私は小さく答え、目の奥が熱くなるのを感じた。「もしかして、ママは最初から来るつもりなんてなかったのかな?」

遠くで、エマが大人たちのグループと一緒に立っているのが見えた。彼女は笑顔を作っていたけれど、その緊張が私にも伝わってくる。何度も携帯を確かめていて、突然、その表情が変わった。

「リリー」私は彼女の袖を引いた。「なんだか様子がおかしい。パパも来てないわ」...

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