チャプター 40

エレナ視点

カウンターから滑り降りると、奇妙なほど足元がおぼつかなかった。一瞬、リチャードの瞳が金色の光を宿したように見えたのだ。

私は礼儀作法の許す限り急いで、彼のバスルームと寝室から抜け出した。まるで物理的な何かのように私を追いかけてくる、彼の強烈な存在感から逃れる必要があった。背後でドアを閉めると、指先が微かに震えていた。廊下で、私はアナとぶつかりそうになった。彼女は大きく目を見開いて私を見つめ、洗い立てのタオルを胸に抱きしめている。

「ウィンター様」彼女はそう言うと、私とリチャードの寝室のドアとを交互に見て、眉を吊り上げた。彼女の頭の中に疑問が渦巻いているのが、手に取るように分か...

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